昨年開催された高速電力線搬送通信に関する研究会に対するパブリックコメントの中に、漁業無線局からの意見がありました。電波法関係審査基準で、27MHz帯DSB漁業無線局の所要電界強度は20dBμV/mと規定されているといいます。
空中線電力数百Wの本格的な海岸局と異なり、27MHz帯DSBは空中線電力1Wですから、電波防護指針上の離隔距離もほとんどいらず、漁港近くの住宅地に置局されていることが少なくありません。実際、その局も、「周囲雑音が多くスケルチが効かない状態になることがしばしばある」と訴えています。
CISPR委員会高速電力線搬送通信設備小委員会(第4回)資料P4-4では、実験結果に基づき27MHzにおける周囲雑音を約12dBμV/mと見積もりながら、無線局空中線が受信するPLC妨害波として18dBμV/mを許容値算出の根拠として用いています。
漁業無線局の受信設備は一般の短波ラジオなどより高級とはいえ、航空管制用無線設備には劣ることが想定されます。受信設備の内部雑音も存在し、20dBμV/mの電界強度相当の入力電圧から内部雑音を差し引いた値の外部雑音でS/N=0[dB]となる計算です。
これで、電波法関係審査基準に従い漁業無線局が運用可能と言えるでしょうか?
私が一番心配していたのはこれだったのです。確かにこれでは運用できないでしょう。フロアノイズが上がれば漁師町にある漁業無線局もさることながら漁船だって困るでしょう。漁業無線局も昔の設備をやりくりしている局が多く、漁船の受信設備も必ずしも上等とはいえませんから。
日本経済新聞
朝刊 6月2日(金)15面 テクノロジー
コンセントを活用し高速通信
メーカー、雑音規制が壁
実用化 見送りの恐れも
コメント2件(追加)