HF-PLC Watching Site

2005-10-05

これって「決着がついた」って言うの?

これまでさんざんPLCを応援してきた日経コミュニケーションとしては待ちに待った「決着」がついたと言いたいのでしょうが,中身は「難問山積」という記事。要するにPLC推進企業が無線業務を保護するための技術を持ち合わせていないことが認定されたということ。

そもそも電力線に高周波を流せば電波は漏れる。例えは悪いかもしれないが,電力線は小さな穴がたくさん開いたホースと考えればいい。電力線通信はそういう欠陥ホースで一所懸命水を流そうとしているようなもの。一気に流そうとしてホースに繋がれたポンプ(モデム)からの送水圧力を上げれば,それだけ勢いよく穴から水(電波)が漏れる。水漏れを減らそうとするにはポンプの送水圧力を下げないといけないが,それだとたくさん水を送ることができない。仕方がないのでポンプからの送り出し方を工夫するのだが,そもそも穴の開いたホースを使っているのだからどうやっても漏れる。穴の開いていないホースを使わない限り,水は漏れるのだ。

穴の開いたホースで水を送ろうとする人がいないことを考えると,PLCを使おうとする人がいないことも明らか。ホースに穴が開いているかどうか調べないで水を送ろうとするオッチョコチョイはいるかもしれないが,送ろうとしても送れないので誰も使わなくなる。「誰も使わない(使えない)」ことが明らかになったという意味では「決着」がついたとも言えなくはないが,これってひどい皮肉になってしまう・・・日経コミュニケーションが皮肉な記事を書くとは思えないからね。デスクが書いた記事に対する皮肉な結果にはなっているが。

松下電器は「全ての製品」にPLCモジュールを組み込むそうだ。本当にそんなことをするなら,電波環境破壊の旗手となる企業になることを宣言したようなものだ。

マスコミを通して「無線保護ができないPLC」という烙印を押されてしまったわけであり,そんな欠陥商品は詐欺もどきの商売でしか売れないだろう。そしていずれは大きな問題に発展する・・・雪印のようになるのかな?

それにしても興味深いのはPLC-J構成会社の反応である。当然複数の会社は座長案には対応できないのだから,PLCで商売するべきかどうか真剣な議論が始まっているだろう。海外製チップを用いたモデムを製作しているところは撤退する可能性のほうが高いのではないだろうか?継続するにはさらなる開発費を投入しないといけないし,マーケットをどのくらい押さえられるかも調査しないといけない。競争相手である無線LANの速度向上,通信可能距離の延伸もめざましい。

松下電器は「冷蔵庫や電子レンジに無線LANを組み込むのか?」とおっしゃるが,そもそもそういう家電をネットに接続する必要性が感じられない。全製品に誰もほしがらないPLCモジュールを組み込み,値段をつり上げることにしか貢献しないのではないだろうか?使いもしない機能を次々加えて「高付加価値・高価格商品」にするのはもう止めて欲しい。ツーカーの「話すだけ」の携帯電話がヒットしている背景を家電業界は真剣に受け止めるべきだ。



posted at 04:33:21 on 2005-10-05 by ohishi -

コメント

jr9mfk さんによるコメント

「大難問」と格闘してきた記者としては「決着がついた」が実感だということは理解できます。研究会構成員の一部もそう考えているかもしれません。

ま、相撲にたとえればようやく前相撲を新序三番出世(1勝もできなくても序ノ口に上げてもらう)で切り抜け来場所は番付に四股名が載りそうという段階。UWBのように、平成14年秋場所で序ノ口デビューしてからいまだ関取になって(給金がもらえて)いない例もあります。これからが本番ですね。
2005-10-05 07:45:32

HW さんによるコメント

私はHFをよく利用するアマ無線家の一人なのでPLC通信に関してはかなり興味深いです。PLC-JとJARLの話し合いも比較的行われているようですし、HFはアマ無線家だけでなく、航空、海運等の業界も被害を受ける事はPLC-Jや総務省も分かっているでしょうから静かに見守って行くつもりではあります。
しかし、HF無線通信に影響の出ない対策と言うのを早く見せて欲しいものですね。
2005-10-05 21:48:26
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