HF-PLC Watching Site

2005-11-11

松下電器のデモが気付かせてくれたこと

CEATECやWPC EXPOに行った人だけでなく、写真(例:CNET記事)でもいいが、松下電器のHD-PLCのデモを見てからパブコメに付されている共存条件案(pdf)58ページ図8.2を見ると、何か気付かないだろうか。

わたしは、どちらも箱庭のようにちまちまとした回路だなぁ、という印象を受けた。実際の屋内配線とは全然違う。

PLC-JがWebサイトで明らかにしているとおり、漏洩電界抑圧技術(pdf)なるもののキモは平衡度改善と送信電力低減である。屋内限定にしたのも伝送距離を短くして小電力で済むようにした狙いがあるし、受信回路で(PLCにとっての)雑音を除去する工夫をするのも送信電力を下げるためである。電波法第54条第2号ではないけれど、最近のPLCモデムには通信を行うために必要最小の送信電力にする機能がある。

そのような観点で図8.2を見ると、現実には存在する「伝送距離」や「分岐」による信号の減衰や他の家電製品等による雑音の影響が測定系に全然反映されていないことに気付く。このような測定系でPLCモデムを測定すれば、送信電力を大幅に下げてしまう結果、コモンモード電流も実状より過小に測定してしまう可能性が高い。また、ISN のディファレンシャルモード・インピーダンスも、10Ω?1000Ωという広い範囲に分布しているにもかかわらず、「所期の通信性能を確保するため」という理由で対向PLC機器の入力インピーダンスにするという、PLCにとって理想的な条件を採用している。

短波放送との共存検証実験では、雑音のない状態でPLCの信号を加えれば劣化が目立つに決まっているから、ITU-R勧告に規定されたレベルの雑音を加え、少しでも実状に近づけるよう努力した跡がみられる(資料9-4(pdf))。それがfairnessというものであろう。

PLC-Jは自分たちに都合の悪い、99%に相当するLCL値ばかり問題にしているが、実はそれ以外の測定条件は理想的に過ぎる、言い換えればPLCの影響を過小評価するものではなかろうか。せめて、実際に想定される減衰量、雑音及びディファレンシャルモード・インピーダンスを反映した測定系を構築する必要があろう。型式指定に要する手間が増えたとしても、それは仕方ないことである。

posted at 23:59:00 on 2005-11-11 by jr9mfk -

コメント

ohishi さんによるコメント

デモでは大変短い電力線を用いていた。これはHF帯の波長よりもかなり短いのでアンテナとしては効率が悪く,放射も少ないが周囲の雑音の影響も受けにくい。デモ会場の広さによる制限もあるだろうが。

主な放射源が長い電力線なのであるから本来は,端子電圧などで許容値を規定するのはおかしく,国際的にも「漏洩電界」で規定するのが通例。それと比べれば日本の案は,電磁環境維持という観点からすると世界の笑いモノとなる案になっている。

最近採択されたITU-R SG6の勧告案は,PLCによる背景雑音の上昇を1%までは容認しようというもの。これに対し,日本の考え方は「背景雑音を2倍にしても大丈夫(だよねぇ)」というもの。しかも前例主義の日本のお役所では「某サービスは現状の背景雑音レベルまでノイズを出しても良いことになったのだから,我がサービスも現状の背景雑音レベルまで出してもいはずだ」と主張する。その結果,背景雑音は倍々ゲームで上昇し,世界に最たる背景雑音の高い国として日本は認知され,ありとあらゆる無線通信が使用不能になってしまうのである。

その時に総務省は自分たちの犯した大罪に気づくのであるが時既に遅し。既に打つ手はなくなり,PLCもUWBも,地デジも何も使えなくなるのであった。
2005-11-12 01:30:38

jh5esm さんによるコメント

「1個システムで3dB(2倍)」「累積効果を考えると12.5dB(18倍)」の雑音レベル上昇を容認する内容ですね.
2005-11-12 05:37:32

ohishi さんによるコメント

jh5esmさん
パブコメ案にある累積効果は,直接波などを無視しているので最小値になっています。実際にはさらに数倍になるでしょう。ですので総合すると背景雑音の50倍(17dB?)も高くなると思います。
しかもこれが前例となるのだから,日本では無線が使えなくなる日も近いですよ。携帯電話,無線LAN,UWB等々,全部使えなくなる。総務省が青ざめるのを見てみたいモノだ。
2005-11-12 18:47:44
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