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2006-05-29

高速電力線搬送通信設備小委員会、放送や電波天文を無視する見解(案)

情報通信審議会CISPR委員会高速電力線搬送通信設備小委員会(第4回)の配布資料が総務省Webサイトに掲載されました。

資料P4?2「関係者からの意見に対するCISPR委員会の見解(案)」を見てびっくり。日経ラジオ社、JARLほか2名の意見に対し、「短波帯無線局の多くは周囲雑音により受信性能が制限されているため、この雑音レベルを基準にしてPLC妨害波の許容値を設定しています」との見解を示しています。

記述式で資格を取ったため、電話級アマチュア無線技士(当時)の出題範囲の条文をあらかた暗誦した人間が見たら「はぁ?」と思ってしまいます。何故って、電波法第2条第5号の『「無線局」とは、無線設備及び無線設備の操作を行う者の総体をいう。但し、受信のみを目的とするものを含まない。 』という定義によれば、放送や電波天文の受信設備は「無線局」ではありません。この見解(案)は、意見を陳述した短波放送事業者や電波天文学者の意見にまったく応えていないことになります。

では、資料P4?2の「無線局」を「無線局及び受信設備」に訂正すれば済むかといえば然に非ず。「高速電力線搬送通信に関する研究会」報告書(pdf)にも添付されている資料9-4「高速電力線搬送通信と短波放送の共存検証実験報告書」(平成17年9月26日;PLC-J、(株)日経ラジオ社、日本放送協会、ソニー(株))によれば、短波ラジオ電界強度40dBμV/mの場合、Businessでも周囲雑音(14.9dBμV/m)より10dB以上低い4dBμV/mのOFDM方式PLC妨害波で検知限(平均評価値4.5)に達することがわかります。つまり、周囲雑音より10dB以上低い値を基準にしてPLC妨害波の許容値を設定しないと、放送の受信設備を考慮したとはいえません。

画像(360x276)・拡大画像(640x493)

(資料9-4図5に環境雑音(赤)、検知限(緑)及びそれを満たすためのPLC妨害波最大許容レベル(青)を加筆。ラジオNIKKEIPLC(高速電力線搬送通信を考えるとの間で相互無断引用)

ちなみに、2006-05-23既報の日経コミュニケーション前田記者の記事では、「航空管制官は環境雑音より6dB低いレベルの雑音が発生してもノイズが増えたと感じるとの実験結果が出た」(国土交通省)という発言があったと伝えられていますが、これまた研究会報告書に添付されている資料9-3(2005年9月26日;高速電力線通信推進協議会)には環境雑音より6dB低いレベルからの実験結果しかありませんので、実際には環境雑音から6dB低い基準どころでは済まず、もっと厳しくしないと航空管制に影響を与える可能性も否定できません。

#ところで、「短波帯無線局の多く」って具体的に何?>高速電力線搬送通信設備小委員会

posted at 23:44:00 on 2006-05-29 by jr9mfk -

コメント

ohishi さんによるコメント

 「みんなが言っている」とよく言いますが,みんなとは「自分の周りにいる意見が同じ人」を指しますね。
 短波帯無線局の多くも同じ。小委員会構成員の考えに合致する感度の低い無線局だけを指します。都合の悪いものは決して目にも耳にも入りませんのです。
 ところで電波天文局などの受信専用局は無線局ではないので共存検討対象に入らないと言いたいのでは?以前研究会の見解として,医療関連機器への影響は検討対象外と公表していますから同じ流れなのかも。都合の悪いものは検討対象からはずすことにするなんて,素晴らしい意志決定機構だ!
2006-05-30 01:05:11

かぜ さんによるコメント

展開が早いです。もう次回来週とは!と言うわけで、とうとう「法令等遵守調査室」にメール出しました。私のブログにも本文をおきました。もしも追加などがあれば、別途申し出ていただけると有り難いです。さすがに突っ込みどころばかりで、何を書いたらよいのか選ぶのに苦労しました。3通も届けば大きな力です。ところで今までにも誰か「法令等遵守調査室」に通報をしているかなあ?
2006-05-30 03:39:13
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