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2006-11-19

組み込み技術展2006レポート:ノイズ源がある場合の速度

11月15日から17日までパシフィコ横浜で開催された組み込み技術展2006に出かけてきました。お目当ては,PLC-Jブースの様子を見ることと17日午後に開催されたPLCに関するカンファレンス(要するにPLC-Jの宣伝セッション)に参加することです。

PLC-Jのブースは2m四方程度の狭い区画で,モデムをいくつか置いてあるだけのものでした。訪れる人も少ない状況。

カンファレンスは100数十名の聴衆が来ていましたが,最初は半分程度しか埋まっていませんでした。講師は,東京電力の小川氏,松下電工の岡田氏,NECの安木氏(磯江氏の代理)の3人でした。

小川氏の話の内容はあまり新しいものはなかったのですが,東京電力としてもくろんでいた構内LANの構築では長距離,また,ビルの階をまたいだ通信では速度が出ないので,リピータを設置するか,フロア内限定のアクセスではないといけない,という話。物理層での速度測定でも,10?70Mbpsとのこと。これから推測するとTCPの場合,理想的な状況で30Mbps程度が上限になりそうです。(この値は,日経BPの測定値の最高値に近い。)

岡田氏の話では,技術者らしく変復調技術の詳細が語られました。電力線という劣悪な通信線を用いるために多くの技術開発が行われた様子がよく分かりました。技術屋にとっては電力線は挑戦しがいのある対象のようです。この中で,松下電工がタップ型PLCモデムを2007年3月に発売予定であるとも紹介されました。このタップは幅24cmもある大きなもので,PLCの特性を考慮したノイズフィルタを組み込むなどの工夫をしているため,市販のノイズフィルタ付きタップでは出ない速度が達成できるとか。比較のために出された,市販のノイズフィルタに様々な電気製品を繋いだ場合の物理層での通信速度測定値が示されていましたが,インバータ照明の場合3Mbps以下,AVプレーヤで2Mbps以下,デジカメ充電器で14Mbps以下,ノートPCで12Mbps以下,ハブを接続すると17Mbps以下ということ。物理層の速度ですから,TCPでは良くて5Mbps程度になるでしょう。お値段の張るノイズフィルタが付いたタップを使えばここまでは酷くはなりませんが,PLCを使うために高価なタップを購入するのは本末転倒です。松下電工製のPLCタップなら物理層で30?40Mbpsが安定に出るとのことですので,TCPで10Mbpsちょっとまではいくでしょう。このPLCタップのお値段については触れられませんでした(CEATECで尋ねた時の答えからは相当高そうです)。

安木氏は急なピンチヒッターとのことでしたが,NECが型式申請をしていることを話していました。また,電力線の減衰が大きいと通信速度が大きく落ちるので売るならそういう点をよく説明することが大切だとも話していました。伝送損失と物理層の速度の測定値グラフを見せていましたが,損失が20dB程度であれば速度は70Mbps程度になるようですが,損失が50dBほどあると速度は15Mbps程度まで落ちるとか(もちろん数値にはばらつきがあります)。損失が50dBの場合,TCPでの通信では5Mbpsも出れば御の字で,2?3Mbpあたりがいいところでしょう。

感想ですが,PLCには例え低速でも安定した通信速度を期待するのは無理で,低速でも構わないからどうしても通信したい場合にのみ使える通信手段だとの印象を持ちました。

posted at 01:00:37 on 2006-11-19 by ohishi -

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