HF-PLC Watching Site

2006-12-19

電力線通信で隣の家と通信可能--屋外電力線がアンテナに?

オンライン版日経新聞に,『電力線通信はどこまで使えるか?――松下のPLCアダプター「BL-PA100」を試す』というタイトルで12月18日19日に連載された記事です。ほぼ中立な立場での実測も含めた記事となっています。

確かにプリセットされているアダプタの使用開始は簡単です。速度に関しても,PLCを妨害するものがなければ30Mbpsは行くとの記述があり,米国CNETのレポートと同程度の数値が挙げられています。もちろん様々な機器が接続されると,通信速度がガクッと落ちたり,通信できないとの周知の事実も報告されています。

さて,記事の中で,マンション内の隣の家と通信できたとの驚く記述がありました。

「同じ棟内の近隣の世帯で片方を差してもらって同じことをやっても、コンセントの系統が同じならほどなくリンクする。PLCアダプターは、世帯内での通信を前提とし、ほかの世帯との通信はできないことになっているが、良くも悪くも信号そのものは近隣にも届いてしまうようだ。」

総務省研究会では,屋内のPLC信号は電力線経由では屋外への減衰が30dB以上あるため漏れの心配はない,としましたが,しっかり漏れることが確認されてしまいました。(信号が運ぶ内容は暗号化されているので少しは安心ですが。)さらに,通信速度に関して同記事は,

「その棟には約40世帯が収まっており、全世帯が一斉に同じ方式のアダプターを使ったとすると20―30Mbpsの帯域を単純計算で80端末以上でシェアする計算になってしまう。当然、そうなれば世帯内で得られる速度は著しく低下する。ゴールデンタイムにハイビジョン映像など伝送できるわけがないし、ノイズの影響が懸念される医療機器をコンセントにつなぐのは、気持ちのうえで厳しいものがある。ぜひとも、世帯間を遮断するブロッキングフィルターがほしいところだ。」

だから,TDKやNECトーキンがPLC向けブロッキングフィルタを製作していたのだと思われます。

KDDIはPLCの使用を一戸建て限定ということで光Oneを販売していますが,マンションで使用すると上記のことがおき,実質的に通信が困難になってしまうことも分かっていたのでしょう。

後編では,一歩踏み込み,

●無視できない電波漏洩の悪影響
●PLCからのノイズが他の機器で誤作動を起こす可能性も
●通信端末としてみたPLCのウィークポイント
●アマチュア無線の電波と相互に影響する問題も
●松下「BL-PA100」で電波の混信などの状況を試す
●安心して利用するには制度上の改善が必要

という見出しで,PLCへの懸念を述べ,そして改善提案を行っています。

<追記>PLC信号が屋外に漏れていることを強調するためタイトルを変更しました。

posted at 00:49:23 on 2006-12-19 by ohishi -

コメント

momo さんによるコメント

同じ棟の他の世帯は「屋外」経由なんでしょうか?
これだけ広範囲に広がると、定期的にSWを押せば他のモデムとも通信可能かもですねー
2006-12-19 12:34:41

shigen-2 さんによるコメント

やれやれですね。そのうち、PLC機器もここ↓に掲載されるんでしょうね?
http://www.meti.go.jp/polic...
2006-12-19 12:52:03

S.N さんによるコメント

CISPR委員会の特殊な考え方?自分の財産は、自分で管理すべき。ただし、他人に迷惑は掛けない。?という自己責任の考え方は破綻た訳です。隣接する他人の住居に信号が伝わっているなら、他人の家に電磁妨害波が発生している現実がある訳です。その家にでは、建物通過による減衰も距離による減衰も無い強烈な電磁妨害波の発生を引き起こしている訳です。
2006-12-20 20:17:46

A.M さんによるコメント

高速電力線搬送通信に関する研究会
・第11回会合(平成17年12月12日(月))○議事録(PDF)
http://www.soumu.go.jp/joho...
9ページ?10ページ
(ここから引用文)
事務局から、資料11?3の3建築物による遮蔽等に関する意見の(3)妨害波の伝搬に関する意見(149?173)について説明があった。
林(政): 166、167 について。PLC 信号が宅外に出ていくことについて非常に懸念を持っている。ブロッキングフィルタを作られているメーカさんからも出ていくのではないか、ということを耳にする。実際に測定しているケースが非常に少ない。かなり測定された値がばらついているにも関わらず、測定数が少なすぎると考えている。
牧: 測定した立場から、少ないと言われれば、LCL を取った個数と比較すれば少ないが、だからと言ってこの20 や30 を否定するものではない。最低の減衰量の話が、基本的にこの見解である。平均値だけではなく、すべて20dB以上の減衰というような書き方になっていることも踏まえていただいて。すべて取り直さなければ、到底納得できないというものではない。ここでご指摘あるとおり、基本的には、分電盤を経る分岐回路数の問題であるので、常識的に考えて、コンセントに2、3 個しか付いてない家ならともかく、数十個必ずコンセントにものが付くと考えた時点で、20dB 以上の減衰は必然的に発
生するものと考えている。
(省略)
林(政): 集合住宅を測ったとのことだが、一つの所ですよね、測ったのは。これが代表値と言える根拠は何か。
牧: 確かに一つであるが、これが代表値と言うつもりもないが、基本的に前後の家の中でどれだけ減衰しているかという話と、家から外にどれだけ出るかという話を両方みて、(資料11-4)43 ページ、図5-31 が全然信用できないという根拠も特にわからない。基本的には家の中で分電盤を経由した時点で20dB 以上だいたい減衰しているのと、分電盤から外へ出た時点で最低限20dB以上減衰しているという結果から、わずか3 本か4 本の線も、その一例を示している線で、これをたくさん取らなければとても信用できないというには無理があると、測定した側としては考えている。これをどのように使ってい
ただいたかはわからないが、基本的にはそう理解している。
座長: 基本的に言うと、図5-31 は見ていない。見ているのは図5-29、図5-33 である。
(ここまで引用文)
※参考
図5-31 集合住宅の隣家間の伝送特性測定結果
図5-29 住宅内電力系統の伝送特性測定結果
図5-33 宅内コンセントから屋外配電線への伝送特性測定結果

資料11?3   「高速電力線搬送通信と無線利用との共存条件について(案)」に対して提出された意見の概要及びそれに対する研究会の見解(案)
http://www.soumu.go.jp/joho...
資料11?4   高速電力線搬送通信に関する報告書(案)
http://www.soumu.go.jp/joho...
http://www.soumu.go.jp/joho...
2006-12-21 23:24:24
コメント4件(追加)

コメント追加